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この絵はジャック=ルイ・ダヴイッドの自画像です。(1748〜1825)ジャック=ルイ・ダヴィッドといえば、有名な「マラーの死」「ホラティウス兄弟の誓い」「ザビニの女たち」、ルーブル美術館で一番大きい名画、「皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式」などを残した新古典主義の歴史画家です。ダヴィッドの有名な名画はたくさんあるけれど、私の一番好きな絵は、この自画像です。

ルーブル美術館で、上記に挙げた絵等を見た時は、ダヴィッドの絵は圧倒的に素晴らしすぎて、描かれている人物像も理想的で、「本当に私と同じ人間がこの神業のような絵を描いたのだろうか?」と、あまりに偉大すぎて近寄りがたく感じたのを覚えています。それが、ある美術誌で、このダヴィッドの自画像を見た時、びっくりしました。ダヴィッドの描く人物画から私が感じた、感情を殺した理想の人間像と違い、この自画像からは、反骨精神ただよう、ちょっと短気そうな、「負けるものか!」という心の叫びが聞こえてきそうな、人間的身近さを感じたからです。。それもそのはず、後で知ったのですが、この自画像はダヴィッドがリュクサンブール監獄に投獄され、自分自身が命の危機を感じた、極限状態時に描かれたものらしいのです。

「なぜ画家が投獄されるんだろう?」と不思議に思ったら、ダヴィッドはフランス革命時、共和制への共感から国民公会に加わり、国王の処刑に賛成票を投じ、(国王ルイ16世は一票差で死刑が決まった。)自分自身投獄され命の危機にあったりしたのです。それがおさまると、今度はナポレオンに傾倒し、ナポレオンが失脚しそうになっても、フランスの王政を否認する対加決議書に署名し、ナポレオンがワーテルローの戦いで敗北を喫するとまたもや命の危機を感じ、とうとう亡命せざるおえなくなったのです。「こんな情熱的な人とは知らなかった。こんな人間臭い(頑固すぎる)人だったなんて・・!!!」一気に私はダヴィッドのファンになり、勝手に私の心の中の絵の(精神的な)先生になってもらいました。

ダヴィッドは指導者としても優れていて、多くの弟子たちが画家として名を成したのです。アントワーヌ=ジャン・グロ、アンヌ=ルイ・ジロデ、フランソワ・ジェラ−ル、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルなど。19世紀は、女性が実際のモデルを使う絵画教室−美術教室の基礎−に出席することを完全に禁じられていた・・・そんな時代、ダヴィッドは女性の生徒を何人か引き受けたそうです。さすが、ダヴィッド先生っっ!!!今一番残念なのは、この絵がルーブル美術館所蔵だったということです。もしかして、私、この絵の前を素通りしていたのかも・・・と思うと、とほほ・・。

サン=ベルナール峠を越えるナポレオン
ダヴィッド(1801)
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